意外と面白い『狼と香辛料 XII』
- 作者: 支倉凍砂,文倉十
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2009/08/10
- メディア: ペーパーバック
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いつものことながら序盤から中盤までのペースがのろいこと、のろいこと。ロレンスの心理の動きと、ロレンスが忖度した他のキャラクターの心理の動きをこれでもかこれでもかとばかりに執拗に書き連ねるものだから、長くならないわけがない。そういうものだと割り切って読めば退屈することもないが、字面をなめるようにして読んでいくとどうしても時間がかかるし、長し読みなら気づかないまま通り過ぎたはずの、意味が掴み取りにくい記述やひっかかる描写で立ち止まってしまう。立ち止まったままでは挫折してしまいそうになるので、勇気(?)を振り絞って先に進むこと数回、ようやく210ページに至り、物語が加速し始める。本文の最終ページが285ページだから全体の4分の3を過ぎた頃だ。
ここから怒濤のように白いモノが押し寄せて事件が落着するまでの畳みかけ*1は見事だ。ああ、そういえば10巻も白いモノが押し寄せて事件が落着する話だった*2が、もしかしたら作者の心象風景の中に固着した映像的イメージの反映*3だろうか?
繰り返される「終末の遅延」には読者もそうだが作者も飽きてきているところだと思う*4ので、次巻では怒濤の急展開を見せてくれるものと期待しよう。
えっ? 雑誌などに掲載した短篇が溜まっているから次は「Side Colors III」だろう、って? んむ、それはあり得るかも。