珠玉の短篇
- 作者: アルフレッド・エドガーコッパード,Alfred Edgar Coppard,南條竹則
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/12/08
- メディア: 文庫
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手持ち無沙汰になったが仕方ない。橋本から横浜線に乗り換え、さらに八王子で中央線に乗って立川へと至るまで、読むべき本もなく*4ぼにゃりとしていた。
立川では駅ビル7階の立川中華街にある台湾素食の店「健福」で腹ごしらえをして、その後南口のアレアレア*5のオリオン書房でこれから読む本を物色したところ、目に留まっのがこの『天来の美酒/消えちゃった』だ。文庫本であまり厚くないし短篇集だから読みやすいだろうと思い、さっさと買って再び中央線に乗り新宿へ。特急スーパーあずさの車中*6で、まず冒頭の「消えちゃった」から読んだ。最初の数行を読んだだけで作者の力量がわかる傑作だった。
新宿で山手線に乗り換えて2篇目の「天来の美酒」を読む。これまた洒落た味わいの作品。今回の旅の宿のある大塚に到着するまでに読み終えた。そして現在に至る。
表題作は傑作でも残りはさほどではない短篇集というのも世の中にはざらにあるので、期待半分不安半分というところ。さて旅行中に読み終えられるや否や?
追記(2009/12/31)
意外なことに旅行中に全部読み終えた。表題作以外の作品の中には面白いのもあればあまり面白くないのもあったが、出来の良し悪しよりもツボにハマるかどうかで面白さが左右されたような印象を受けた。巻末の「天国の鐘を鳴らせ」は短篇というより中篇でお話の作り方自体が違っているから別として、後の作品はみなオチがついているといえばついているのかもしれないがどことなく釈然としない終わり方の短篇ばかりだからだ。たぶん「釈然としない終わり方」そのものには優劣はなくて、読者の胸に沁み入るかどうかが面白さの分かれ目になるのだろう。極端なことをいえば、明日読みなおせば全く違った感想を抱く可能性だってある。
というわけで客観的な評価はできないのだが、集中のベストを強いて選ぶなら、比較的わかりやすいオチの「消えちゃった」と、チェスタトン的逆説を地の文でやった感のある「天来の美酒」の表題作2篇ということになる。つまらない結論でごめん。