朝鮮民族と通奏低音
朝鮮民族を読み解く―北と南に共通するもの (ちくま学芸文庫)
- 作者: 古田博司
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/03/01
- メディア: 文庫
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『朝鮮民族を読み解く』のほうは、しばらく放置していたが、幸いにも本の山に埋もれることなく、少しずつ読み進めて、昨日ようやく完読した。なかなか面白い本だった。
この本はちくま新書から1995年に出たものの文庫化だそうで、初刊本の「あとがき」の後に文庫版あとがきにかえて「それでも変わらぬ通奏低音」と題された文章が置かれている。その最後の段落を引用する。
本書は今から十年前に書かれたものであり、韓国や北朝鮮がまだまだ良い時代だった頃の産物といえる。韓国はまだ金融危機を知らないし、北朝鮮はあの自然災害を知らない。日本にはまだ北朝鮮の正義を信ずる人々がいたし、韓国人との連帯に希望をかける人々がいた。本書からそのような時代の雰囲気を感じとっていただければ幸いである。筆者もその頃から底流する変わらぬ通奏低音に耳を傾けつつ、筆を擱くことにしたい。
『朝鮮民族を読み解く』全文の中でほかに「通奏低音」という語が用いられている箇所があったかどうか、もう覚えていないのだが、今引用した箇所だけ読めば、ここで著者がこの語にどのような意味を込めているのかは明らかだ。時代を超えて受け継がれる朝鮮民族の本質とか根源とか、そういった類いの事柄だろう。もちろん比喩表現だが、ここで通奏低音を引き合いに出すのはどうだろうか?
そういえば、以前「通奏低音用例集」というページを作っている人がいたのだが、今見に行ったらファイルが削除されていた。インターネットアーカイブで調べると去年6月にはまだあった*1ようだ。
それはともかく、「通奏低音」という語が比喩的に用いられるとき、往々にして本来の通奏低音のイメージとは異なるものになる*2のだが、「じゃあ、『本来の通奏低音』って何なのよ?」と訊かれても専門家ではないからうまく答えられない。とりあえず
を参照するとよくわかると思う。
*1:何か具合の悪いことがあって削除したのかもしれないのでリンクは張らない。
*2:つうそうていおん【通奏低音】の意味 - 国語辞書 - goo辞書を見ると、既に比喩的用法が確立されており、もはや誤用とも言いがたいようだ。