キハのキは気動車の気

鉄道の知識に不自由な人は蒸気機関車以外の列車をなんでもかんでも「電車」と呼ぶ。それは悲しいことだが、彼らには罪はない。単に無知なだけだ。真理の光から遠ざけられた不幸な人々は「気動車」という言葉すら知らないのだ。もっと光を!
マスメディアや行政機関がこのような無知を晒すのは困りものだ。過去に2回ほどこの日記で指摘したこともある。

だが、一般の人が気動車のことを「電車」と呼んでも、密かに心の中で憐れむだけだ。無知の壁は厚く、人生は短い。「自分さえよければ」というのは身勝手かもしれないが、いちいち他人の誤りを指摘して正しい道を教え諭すほど聖人君子ではない。残念だが、何が電車であり何が電車でないことを知らない人は、死ぬまでそのままでいるほかはない。運がよければ本当の聖人に巡りあって、闇から解放されることもあるだろう。
と、前置きしたところで。
今日、こんな記事を読んだ。

「津和野の赤い瓦と赤い電車」というタイトルを見ただけで、おかしさに気づいた。山口線は全線非電化だ。最近は非電化区間でも走れる電車が開発されているが、山口線を走っているという話は聞いたことがない。
で、本文を読んでみると、次のような記述があった。

 しばらく景色を見ていたら、遠くから電車が走る「ガタン、ゴトン」というジョイント音が響いてきた。やがてキハ40系と思われる古い褐色の気動車が2両編成でやってきた。中国山地の情緒あふれる景色の中、石州瓦の赤と電車の塗装が絶妙にマッチする。ここだけでしか見られない光景だ。

これは不思議だ。
この筆者は少なくとも「気動車」という言葉を知っている。にもかかわらず「電車」とも書いている。
気動車は電車でないことを知りつつ、一般人は概して「気動車」という語を知らないので、不正確ではあるがより馴染みのある「電車」で置き換えて読解の助けとした、ということなのだろうか? いや、それなら、はなから「気動車」という語を使わなければいいだけのこと。ことさら「キハ40系」などと書くこともあるまい。
では、気動車は電車のうちに含まれるという誤った認識のもとで書かれた文章なのだろうか? 論理的にはその可能性も否定できない。だが、いったい、どうすればそのような誤解が生じるのか見当もつかない。
もしかすると、筆者は「赤い列車」と書いていのを編集者が「赤い電車」に変更したということなのかもしれない。これなら、まあわからなくもない。
と、こんなことをあれこれ考えているうちに夜も更けてきた。そろそろ寝るとしよう。
明日は今日よりも、より素晴らしい日でありますように!