何か重要なものを忘れてやしませんか?

ちょっといやらしい話*1なので、「続きを読む記法」で。
世にクローズド・サークルもののミステリは数多くあれど、「この1冊」として挙げるなら

シャム双子の謎 (創元推理文庫 104-11)

シャム双子の謎 (創元推理文庫 104-11)

これに尽きるのではないだろうか。いや、別に
シャム双生児の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-17)

シャム双生児の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-17)

こっちでも構わないのだけど。
正直言ってこれは国名シリーズの中で評価が高いほうではない。純粋に謎解きの面白さを楽しみたい人にとっても名探偵の快刀乱麻を断つがごとき名推理を期待する人にとっても、エラリーまたはエラリィのぐだぐだぶりは目に余るだろう。
しかし、この小説をクローズド・サークルものとしてみたとき、評価は一変する。クイーン親子が閉じこめられた空間はじわじわと縮まっていくのだ。これは怖いよ。
極限状態で発生した殺人事件の謎。その謎を解いて犯人を指摘したところで、その行為はすべて無効になってしまうかもしれない。そんな迫り来る危機のもとでひたすら推理を続ける名探偵。こんな状況は、絶後とは言わないが空前のものだろう*2。この小説を読んだのは小学生のときで、その後一度も再読していないが、今でもあのインパクトは忘れられない。
クイーン一世一代の大傑作だ*3
ただ、残念なことがひとつだけ。最後にエラリーまたはエラリィが「あちあち」とか言いながら焦げ焦げになってしまったほうが面白かったのに。

追記

リッパー氏曰く

秋山くんとこの。わしだったら、米澤穂信《宿命のライバル》!? 北山猛邦「『アリス・ミラー城』殺人事件」を挙げるな。

そういえば『『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社ノベルス)』読みかけのまま放置していた……。

*1:猥褻な話という意味ではない。どういう意味でいやらしいのかはこの後を読めばわかる。

*2:前例があったらごめん。

*3:と煽ってみたが、ここだけの話だ。別の場所では別の作品をクイーンのベストに挙げるだろう。