何か重要なものを忘れてやしませんか?
ちょっといやらしい話*1なので、「続きを読む記法」で。
世にクローズド・サークルもののミステリは数多くあれど、「この1冊」として挙げるなら
- 作者: エラリー・クイーン,井上勇
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1960/03/11
- メディア: 文庫
- クリック: 6回
- この商品を含むブログ (30件) を見る
シャム双生児の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-17)
- 作者: エラリイ・クイーン,青田勝
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/06/01
- メディア: 文庫
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
正直言ってこれは国名シリーズの中で評価が高いほうではない。純粋に謎解きの面白さを楽しみたい人にとっても名探偵の快刀乱麻を断つがごとき名推理を期待する人にとっても、エラリーまたはエラリィのぐだぐだぶりは目に余るだろう。
しかし、この小説をクローズド・サークルものとしてみたとき、評価は一変する。クイーン親子が閉じこめられた空間はじわじわと縮まっていくのだ。これは怖いよ。
極限状態で発生した殺人事件の謎。その謎を解いて犯人を指摘したところで、その行為はすべて無効になってしまうかもしれない。そんな迫り来る危機のもとでひたすら推理を続ける名探偵。こんな状況は、絶後とは言わないが空前のものだろう*2。この小説を読んだのは小学生のときで、その後一度も再読していないが、今でもあのインパクトは忘れられない。
クイーン一世一代の大傑作だ*3。
ただ、残念なことがひとつだけ。最後にエラリーまたはエラリィが「あちあち」とか言いながら焦げ焦げになってしまったほうが面白かったのに。