茶ではなく心

紅心王子 1 (ガンガンコミックス)

紅心王子 1 (ガンガンコミックス)

今から考えればなんでそんな勘違いをしたのか自分でも全くもって不可思議なのだけれども、このマンガを書店の新刊棚で見かけたとき、タイトルを読み間違えて『紅茶王子』だと思いこんでしまった。読んだことはないけれど、『紅茶王子』というタイトルの有名マンガが別にあることは知っていたのだから、常識を働かせれば自分の勘違いに気づいたはずなのだが、得てして思い込みというものは理屈に合わないことを信じるもので、タイトルのかぶりを全然気にせず、そのまま年を越した。その間、この本はずっと机の上のパソコンのすぐ斜め左手前に置いてあった。
さて、新年に入ると全然読書意欲がわかず、小説はもとよりマンガもほとんど読んでいなかったのだが、一月もはや三分の一を過ぎて中旬に入り、そろそろ未読のマンガだけでも片づけておこうかという気になった。そこで、ついさっき手に取ったのが、この『紅茶王子』ならぬ『紅心王子』だったというわけだ。読み始めてもしばらくの間はまだタイトルを誤解したままだったが、いつまで経っても紅茶が出てこないので、さすがに半分くらい読んだところで間違いに気がついた。
紅心王子
ルビなしではたぶん初見で読める人はいないだろうと思われるこのタイトルは、「くれないおうじ」と読む。「心」はいったいどこへ行ってしまったのだろうか? なんという心ない仕打ちだろう! こう読ませたいなら素直に『紅王子』にしておけばよかったのに。というような不満はあるものの、もともとタイトルを勘違いしていた非があるので強くは言えない。いや別に強く非難してもいいが、それで何がどうなるというものでもない。いや何かがどうにかなるのだとしても、それでタイトルが変更されるわけでもない。タイトルの話はこれくらいにしておいて、早速、感想に取りかかることにしよう。
このマンガは「月刊少年ガンガン」連載だそうなので、掲載誌でジャンル分けすれば少年マンガということになるだろうが、明らかに少女マンガの文法で描かれている。最近、「ガンガン」は読んでいないのでどういう傾向になっているのかは知らないのだが、昔からあまり少年誌少年誌した少年誌ではなかったので、別に媒体とミスマッチということはないだろう。でも、本誌ではここまで「花とゆめ」っぽいマンガはあまりなかったような気がする。なお、「花とゆめ」も最近は全然読んでいないので、ここでいう「花とゆめ」っぽさというのもまた10年以上前の同誌を念頭において言っていることなのだが、たぶん今でも大きな違いはないだろうと思う。
悪魔の少年と人間の少女のボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーということで、鈴木ジュリエッタの『悪魔とドルチェ』を連想したのだが、視点は逆に悪魔のほうに置かれている。絵柄も全然違う。でも、雰囲気はかなり似ているように思う。いや、わざわざ取り立てて比較するほど似ていないかもしれない。どっちでもいい。
とにかく面白かった。
年末にストレス発散のために適当に新刊棚から掴んでレジに持っていった数冊のうちの1冊で、だから特に期待もせず積んでいたのだが、今から思えばもったいないことをしたように思う。まだおはなしは始まったばかりでこの先の展開は全然わからないが、続巻にも期待したい。ええと、連載まだ続いていますよね?