連続刊行第2弾

神様のメモ帳〈3〉 (電撃文庫)

神様のメモ帳〈3〉 (電撃文庫)

先月の『死図眼のイタカ』に続き、杉井光の作品が2箇月連続で刊行された。ここを見ると、来月と再来月にも新刊予定があるそうなので、予定通り出れば4箇月連続刊行ということになる。大盛況だ。
多作は作品の質の低下を招くことになりがちなので、ちょっと心配していたのだが、杞憂だった。みんなが愛したニート探偵アリスは1年のブランクを経ても健在で、気の利いた毒舌も昔のままだ。ひとつ紹介しよう。

「もはや君の精神構造は理解不能だよ、その脳みその中身に比べれば、フィネガンズ・ウェイクの方がまだしも理解がたやすいくらいだ。テツと拳で勝負するだって? 頭蓋に強い衝撃を与えて知能を改善しようとでもいうのならビル解体業者を紹介するよ」
【略】「フィネガンズ・ウェイクは翻訳で読んだの?」
「原文にきまっているだろう話をそらさないでくれたまえ!」

読みようによっては柳瀬尚紀に対してかなり失礼な発言だが、まあ、本人の目に触れることはあるまい。
ミステリとしての出来映えはどうかといえば、ミスディレクションがほぼ皆無なのでやや微妙なところもあるのだが、思春期特有のもたもたとしたすっきりとしない心情を描く青春小説としてはよく書けていたと思う。いい小説でした。
一旦は打ちきりかと思われたこのシリーズが無事復活したことを喜ぶとともに、次巻はあまり間をあけずに、できれば今年中には出して貰いたいと願う。