正式名称が軽視されまくりの「三鷹市立アニメーション美術館」

三鷹市立アニメーション美術館の呼称にまつわる話題はこれまでさんざんネタにしてきたので今さら感が強い*1のだが、以下の記事を読んで思い出したので、重複を恐れず*2取り上げることにしよう。

「愛称権」というべき「権利」を行政が作り出し,議会や市民に諮ることなく売却するという公共施設のネーミングライツは,議会で議決された正式名称を軽視するものであるとともに,寄付や寄贈・その他の市民の支援を排除しかねないという問題を抱えています。

三鷹市立アニメーション美術館の場合は、横浜市命名権売却とは違い、施設の維持管理経費の財源を確保するために通称を作り出したわけではないが、議会で議決された正式名称を軽視している点はよく似ている。
参考のため、三鷹市例規集から三鷹市立アニメーション美術館に関する例規*3を見てみよう。探すのは簡単で、五十音索引で【あ】の項に、次の2つの例規が掲載されている。

名称に関する規定は条例・規則それぞれの第2条にある。以下、例規特有のレイアウト*4や論理構造は無視してベタなコピペで引用しておく。

(名称及び位置)

第2条 美術館の名称及び位置は、次のとおりとする。

名称 三鷹市立アニメーション美術館

位置 三鷹市下連雀一丁目1番83号

2 美術館の通称は、規則で定める。

(通称)

第2条 三鷹市立アニメーション美術館(以下「美術館」という。)の通称は、三鷹の森ジブリ美術館とする。

議会の議決を経て制定された条例の中に通称の決定を規則に委任する旨の規定があるのだから、全くの議会軽視とは言えないのだが、「三鷹市立アニメーション美術館」という正式名称が蔑ろにされていることに違いはない。
まあ、通称を決めるという発想自体が奇妙きわまりないので、正式名称の軽視など取るにたらないことかもしれないが。
ちなみに、同じ三鷹市にある三鷹市美術ギャラリーには、こんな変な「通称」は存在しない。ついでなので、三鷹市美術ギャラリー条例第2条もみておこう。

(名称及び位置)

第2条 ギャラリーの名称及び位置は、次のとおりとする。

名称 三鷹市美術ギャラリー

位置 三鷹市下連雀一丁目1番83号

これだけだ。もちろん、「ギャラリーの通称は、規則で定める」などという条文はないし、三鷹市美術ギャラリー条例施行規則にも通称を規定するような条文はない。
さて、この奇妙な三鷹市立アニメーション美術館の設立経緯や機構などは、三鷹の森 ジブリ美術館 - 美術館についてにかなり詳しく書かれている*5のだが、その中で美術館の名称について面白い表現を見つけたので紹介しておこう。

3月30日 「三鷹市立アニメーション美術館条例施行規則」が三鷹市長名で公布され、通称名である「三鷹の森ジブリ美術館」が正式な通称名となる

「正式な通称名」で検索するとトップだった。
ところで、三鷹市立アニメーション美術館博物館法上どういう扱いになるのだろうか?*6 市長部局*7が所管しているようなので登録博物館ではなさそうだが、博物館相当施設の指定くらいは受けているのだろうか? いろいろ調べてみたところ、文化庁 | 美術館・歴史博物館 | 公立の美術館・歴史博物館における指定管理者制度の導入状況公立の美術館・歴史博物館(登録博物館・博物館相当施設)における指定管理者制度の導入館の一覧【PDF】には三鷹市立アニメーション美術館は掲載されていなかったので、登録博物館でも博物館相当施設でもないようだ。
最後におまけ。

三鷹市立アニメーション(ジブリ)美術館周辺違法駐車防止指導等業務の事業者を募集します。

*1:と書いたが、過去ログを見てもそのものずばりの記事はなかった。あれ、書いたはずなんだけどなぁ?

*2:これはいい表現だ。同じネタの焼き直しでも、こう言っておけば非難を免れることができる。

*3:ここでは「例規」を「条」と「則」という意味で用いる。「例規」という語の意味や含みについては、「例規」と「法規」 - 自治体法制執務雑感が参考になる。

*4:条の見出しは1文字空けるという類のきまりごと。

*5:ここに書かれている都市公園法の規制回避のための超絶技巧とか、ここに掲載されている役員名簿とか、マニア的には興味深い情報が多いが、今回は名称の話に絞ることにしているので、そっち方面の話は省略。

*6:今回は名称に関する話に絞るつもりだったが、博物館ネタだとどうしてもこの話題に触れたくなる。興味のない人のほうが多いと思うが、そういう人は適当に読み飛ばしてくださいな。

*7:生活環境部コミュニティ文化室という部署らしい。