沖縄物産展でボンカレーを買った話

近所の郊外型スーパーマーケットが先日大改装した。テナントで入っていた某家電量販店が独立(?)して別店舗を構えたため空いたスペースに催事場を作った*1のだ。で、そこで沖縄物産展を開催していたので、ちょっと様子を見に行った。何も買うつもりはなかったのだが、そこにボンカレー*2を見つけて驚愕し、ついふらふらと買ってしまった。
遠方は聖性を帯びる。現地の人にとってはごくありふれた日常であっても、遥か彼方の人々にとっては幻想に彩られた聖地となる。しかし、前世紀に目覚ましく発達した交通・物流システムは聖地を通俗化し、巡礼を観光旅行へと転化させた。グローバリズムの進展に伴い、俗化はますます激しくなり、おそらくあと10年も経たないうちに世界中どこにいっても日常の延長し見いだせなくなっていることだろう。
各地域は聖性を保持し、さらに増そうと懸命に努力する。だが、努力する理由が世界市場の中で自地域の価値を高めようというものだから、この勝負ははなから負けが約束されたようなものだ。個性の尊重が没個性の原動力となるパラドクス。
沖縄物産展のボンカレーは果たしてそのような醜悪な現状に対するパロディだったのだろうか? それとも何も考えていなかっただけか? 疑問は尽きないが、販売員に問い合わせても答えてはくれないだろうから、黙っておいた。
家に帰って食べたボンカレーの味は、子供の頃に食べたものと同じだった*3

*1:中心市街地や駅前の再開発ビルなどではよく見られる現象だが、同じことが郊外でも起こっているということは、「衰える都市vs.栄える郊外」という二項対立図式がうまく機能しなくなりつつあることを示唆しているのではないだろうか?

*2:沖縄限定の松山容子ヴァージョン。昨年、全国でも期間限定で復刻されたが、たぶんもう売っていないと思う。詳細はボンカレー公式サイトまたはボンカレー - Wikipediaを参照。

*3:ただし、ボンカレーゴールドもボンカレークラシックも味の違いがわからないことを告白しておこう。