コンチェルト・グロッソ方式

上の音楽の趣味で「今この文章を読んでいる人の中ではペーツはもとよりテレマンを知っている人すら数少ないと思う」と書いたが、ふと「テレマン知名度ってどのくらいのものだろう?」と思った。客観的に調べる手軽な方法などないが、とりあえずはてなキーワードをみると、月に数件は言及されているようだということがわかった。ただし、作曲家のゲオルク・フィリップ・テレマンのほかに、日本テレマン協会*1に言及した記事でも引っかかる*2ことに気づかされたのが、この記事だ。で、その中にこんな一節があった。

フォルテピアノ管弦楽の協奏的な部分で指揮者・延原は、バロック期のコンチェルト・グロッソ方式を採用。フォルテピアノのソロ時は管弦楽のトップ奏者だけが演奏するスタイルで、18〜19世紀のヴィーンでは当たり前の演奏法だった。この方式により強弱のメリハリが強調されるとともに、高い水準のアンサンブルが実現。バロック期の音楽に永年取り組んできた音楽家ならではの視点だ。

これは、ベートーヴェンの<合唱幻想曲>についてのコメントだが、探してみると別の項では同じベートーヴェン交響曲第8番についてのコメントでも「コンチェルト・グロッソ方式」という言葉が用いられていた。

当時の演奏習慣では、弦楽器にはアマチュアが参加し、強奏時には全員で、弱奏時には上位奏者のみで演奏するコンチェルト・グロッソ方式がとられていた。したがって音量は「10人の弱奏」から「100人の強奏」までの広い幅を持つ。

"コンチェルト・グロッソ方式" - Google 検索で調べてみると、ほかには日本テレマン協会の演奏会のプログラム【PDF】しか引っかからなかった*3ので、もしかすると「現代古楽の基礎知識」管理人の澤谷夏樹氏の造語かもしれない。
楽曲形式としてはバロック音楽とともに滅んでしまったコンチェルト・グロッソが、演奏方式としてはベートーヴェンの時代まで生きていたとは意外だった。
ちなみに、合奏協奏曲 - Wikipediaによると、

合奏協奏曲を作曲した有名な作曲家としては、リピエーノを拡大して管楽器を追加したヘンデルがいる。また、J.S.バッハブランデンブルク協奏曲を大まかに合奏協奏曲の形式に沿って作曲している。特に、第2番はリコーダー、オーボエ、トランペット、そして独奏ヴァイオリンによるコンチェルティーノを持っている。

と書いてあるのだが、ヘンデルはともかくバッハのブランデンブルク協奏曲はちょっと違うように思う。「大まかに」という表現でほかしているので、数年前に読みかけてやめた『西洋音楽史』ほどひどい図式化ではないのかもしれないが……。

*1:この団体名は作曲家テレマンに由来するが、いつもテレマンの音楽ばかり演奏しているわけではない。

*2:ほかには『殺し屋テレマン』でも引っかかる可能性があるが、こちらはそもそも言及されることが圧倒的に少ないので無視できる。

*3:該当箇所の文章は、上で引用した日本テレマン協会のベートーヴェン (4) - 現代古楽の基礎知識で書かれているものとほとんど同じ。