どこよりも早い!! 勝手にひとりで2008年下半期ライトノベルサイト杯
こんばんは、安眠練炭です。倉敷チボリ公園最期の日、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
さて、今日は2008年ライトノベル読み納め、一迅社文庫2008年12月刊行全3冊の感想に続き、ライトノベルネタ三本立てでお送りしています。三本立て最後の話題は、ライトノベルサイト杯です。
公式サイトではたぶん新年そうそうに告知が出るものと思われますが、来年の話をすると鬼が笑うので、勝手にひとりで2008年下半期に出たライトノベルのベスト選びを行うことにしました。ルールは2008年上半期ライトノベルサイト杯 開催のお知らせ - 平和の温故知新@はてなに記載されているものに準ずるものとします。
「新規作品部門」=「2008年7月1日以降の日付で発表された新作・シリーズ作品」
「既存作品部門」=「2008年6月30日以前に発表された作品を持つシリーズ作品」(08年7月〜12月中に新刊が無いシリーズは除外します)
では皆さん、一足早い2008年下半期ライトノベル杯をごゆっくりお楽しみください。
番外
『ハローサマー、グッドバイ』(マイクル・コーニイ/河出文庫)
いきなり番外から始めた。
別に新規作品部門に入れてもよかったのではないかという気もするのだが、ラノベレーベルから出ているわけでもないので、いちおう番外扱いということにしておく。今年お薦めの1冊でもある。
ところで、『ハローサマー、グッドバイ』といえば、こんな感想が……。
……あー、あとええと、以上は今年読んだ小説の話でしたが、そのジャンルを「今年触れた作品」にまで広げるなら、そのベストはもちろん当然のことですが『うみねこのなく頃に』で完全固定です。だってうみねこって、『ハローサマー・グッドバイ』のラストの展開に並ぶかそれ以上の衝撃がほぼ一・二時間に一回とかくらいのペースで何度も何度も襲いかかってくるんですものね! もうね、誰かに見せてるわけでもないのに、誰もいない一人の部屋で「うええ、うぐええー」とか声漏らしてリアルにぶるぶる震えながらテキスト読み進めたりしてるわけですよ。知ってますか? 人間って、フィクション作品の与える興奮によって手足や脇腹が痙攣したり、過呼吸状態に陥ったりするんですよ? なんの比喩でもなく単なる生理現象として、フィクションは人間に対しそれほどの力を持つのだということを私に教えてくれたのがひぐらしうみねこという作品です。
非常に興味をそそられる。そそられはするのだが……公式サイトの作品紹介を読むと一気に萎え萎えになってしまい手を出す気にならないのだ。だって、
“解けるようにできている”甘口パズルをお好みの方はどうぞお引取りを。
なんて書いてあるんだから。
『退出ゲーム』(初野晴/角川書店)
番外その2。これもラノベレーベルではない。というか文庫ですらない。よくできた青春ミステリで、ラノベファンにもぜひ読んで貰いたいのだが、ハードカバーだから抵抗のある人も多いことだろう。ちょっと残念。
ところで、ネット上の感想サイトのいくつかで、米澤穂信を引き合いに出しているのを見かけたことがあるが、私見では両者の類似は表面上のものに過ぎず、内実は全く異なる。たとえば、『退出ゲーム』所収の「クロスキューブ」と『春期限定いちごタルト事件』所収の「For your eyes only」の、それぞれの最後のページを読み比べてみれば違いは一目瞭然だ。
『退出ゲーム』は非常に面白かったので、機会があれば別の作品も読んでみたいとは思っているが、でもやっぱり米澤穂信の作風のほうが好みにあっている。『秋期限定栗金飩事件』が今年中に出ていれば一押しだった*1のだが。
新規作品部門
『AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜』(田中ロミオ/ガガガ文庫)
夢と現実のせめぎ合いのバランスが絶妙。これ以上甘いと白けるし、これ以上辛いと胃にもたれる。「現実はもっと厳しい!」と声高に叫ぶ人にも「ラノベに現実を持ち込むな!」とわめき立てる人にも受け入れられない内容なので、世間ではどの程度評価されているものか、少し気になるところだが。ちなみに、『人類は衰退しました』は面白いとは思うものの、微妙なさじ加減が肌に合わず、1巻で読むのをやめてしまった。
『ばけらの!』(杉井光/GA文庫)
絶妙なバランスで自家中毒を回避した『AURA』とは逆に、恥も外聞もなくドツボに向かって吶喊したような感がある。できれば1巻でやめてほしかったが、一度パンドラの蓋が開いてしまった以上、もうどうにもならないのかもしれない。いや、2巻も読みますよ? 杉井光の本は全部読むことにしているので。
『名探偵失格な彼女』(伏見つかさ/VA文庫)
コミケ会場及びコミケ合わせのオフ会の場で『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』と『名探偵失格な彼女』の両方を読んでいる人約10人にどちらを推すかを訊いたところ、その全員が『名探偵失格な彼女』を支持したので「ああ、世の中まだまだ捨てたもんじゃないな」と思ったものだが、でもよく考えてみれば、ラノベ読み50人以上に会ったのに『名探偵失格な彼女』を読んでいる人がたかだか10人程度しかいなかったのだから、やっぱりこんな世の中滅んでしまったほうがいいのかもしれないと思う今日この頃です。
『ぴにおん!』(樋口司/MF文庫J)
先月ネット断ちをしていたときに書店でたまたま手にとって衝動買いし、一気に読んだ作品。大傑作ということはないがそこそこ面白かった記憶があるのだけどネット上での評価は無茶苦茶低い。
みんな厳しいなぁ。
『激辛!夏風高校カレー部(いもうと付)』(神楽坂淳/スーパーダッシュ文庫)
これも衝動買いした。後から考えれば、作者は『大正野球娘。』*2を書いた人だが、そのときには気がつかなかった。気のせいかもしれないが、ネット上での評判をもとに読んだ作品より、自分の感性を頼りに選んだ作品のほうが後々まで印象に残っている。
あ、なぜこれを衝動買いしたのか、今思い出した。タイトルに「いもうと付」と書いてあったからだ。でも読んでみたら別に妹はどうでもよかった。熱いカレー勝負の物語だ。
既存作品部門
『たま◇なま』(冬樹忍/HJ文庫)
これは前回も「既存作品部門」の5タイトルのうちに挙げた。その後、6巻が出た折にもプッシュしたので意外性は全くないが、別にこんなところで意外性を狙う必要はないので何度でも推す。いいものはいい。
『えむえむっ!』(松野秋鳴/MF文庫J)
これも前回にも挙げたシリーズ。元来飽きっぽい上に忘れっぽいので、シリーズが長期化すればするほど読む気が失せることが多く既存作品はどんどん切っていくから、どうしても毎回似たり寄ったりのセレクトになってしまうのだ。
『死神のキョウ』(魁/一迅社文庫)
5月の一迅社文庫創刊時に一番人気だったのですぐに続篇が出るかと思っていたのに2巻が出たのは半年後の11月だった。遅筆なのかと思ったらそういうわけでもなく、本業が猛烈に忙しいせいだそうだ。次も半年くらい待たされそうな雰囲気だが、まあ気長に待つことにしましょう。
ただ一つ不安なのは、3巻が出る前にレーベルが(以下略)。
『SH@PPLE』(竹岡葉月/富士見ファンタジア文庫)
前回、新規作品部門に挙げたうえで、公式でも5位以内に入ると予想したが、予想どおり4位にランクインしていた。うん、納得、納得。
世間で評価されている作品だからあえて無視するといった歪んだ心性は全く持ち合わせていないので、当然今回もベストに入れることにする。
ところで、別にここで言及することでもないが、竹岡姉妹繋がりで、"文学少女"シリーズについて一言。今年の「このライトノベルがすごい!」で1位になったくらいで非常に評価が高いシリーズではあるのだが、個人的な感想を言えば、それぞれの巻で題材にしている文学作品に比べると相当見劣りがする。結局、最終巻まで投げ出さずにおつきあいしたくらいなので決して嫌いなシリーズではないのだが……。
追記
あ、しまった。新規作品部門に『女帝・龍凰院麟音の初恋』(風見周/一迅社文庫)を、既存作品部門に『さよならピアノソナタ』(杉井光/電撃文庫)をそれぞれ入れる予定だったのに、あれこれいじくり回しているうちに忘れてしまった。
でも、今さら上から1タイトルずつ抜くのもどうかと思うので、追記に留めておく。