横浜美術館でみた2枚の「青春の泉」


昨日、横浜美術館フランス絵画の19世紀 美をめぐる100年のドラマ アカデミスムか?印象派か?をみにいった。午前10時開場のところ、9時半過ぎに着いたのだが、既に10人くらい並んでいて、開場時には50人くらいの行列になっていたくらいなので、かなり盛況のようだ。

新古典主義とアカデミスムの違いもわからない*1くらいの素養しかないため、この展覧会で19世紀におけるフランス絵画の歴史的展開について理解を深めたということは全くないのだが、いくか気に入った作品が印象に残った。
そのうちのひとつが、ポール=フランソワ・カンサック(Paul-Francois Quinsac)の「青春の泉(La Fontaine de Jouvence)」という作品だ。アーサー王伝説に材を取ったものだそうだ。どういう絵かというと……ええと、言葉で説明するより画像をみてもらったほうが早いのでここ*2を参照されたい。カンサックなどという画家の名前を見聞きするのは初めてで、たまたま自分が知らないだけなのか、あまり知られていない画家なのかがわからなかったのだが、後で調べてみると後者*3だったようだ。でも、この1枚の絵で名前を覚えた。別の絵をみる機会があればいいのだけど。
さて、特別展をみた後、常設展示室へと向かった。いま横浜美術館コレクション展 2009年度 第2期として

  • 近代フランス絵画
  • 大正・昭和の絵画
  • テーマ展示:「祝いとよろこびを描く」
  • シュルレアリスムの美術
  • 戦後の日本画・現代の日本画の諸相
  • 近代日本の残像―幕末明治から大正へ

という6つの企画展示が行われている。
そのうちの「シュルレアリスムの美術」のコーナーで、マグリットの「青春の泉」という絵*4が展示されていた。別に特別展にあわせて同題の作品を展示したということはないだろうが、同じタイトルでありながら全然別の絵がある*5ということに名状しがたい感慨をおぼえた*6
ところで、「青春の泉」とは関係ないが、「戦後の日本画・現代の日本画の諸相」コーナーに展示されていた「世界中の子と友達になれる」という奇妙なタイトルの作品*7も印象に残った。作者は松井冬子という人だ。あれ、なんかこの名前、どこかでみた覚えがあるなぁ、と思って記憶を辿ってみると、去年、浜松で個展が開催されていた人だった。遠州鉄道乗りつぶしのついでにみようかと思っていたのだが、夜行バスで浜松入りしてさっさと鉄道に乗ってしまい平野美術館開館まで待っている間に眠り込んでしまいそうな体調だったので、みにいくのをやめたのだった。しまった。これはみておくべきだった。

*1:アングルはアカデミスムの画家だろうと思っていたがぎをらむ氏に「違う、アングルは新古典主義」と正された。でも、美術史上の新古典主義のことを全然知らなかったので、音楽史からの類推で20世紀の潮流だと勘違いし、「アングルって19世紀の人じゃなかったっけ?」と首を傾げたのがまるで昨日のことのようだ。実際には一昨日のことだが。今、新古典主義 - Wikipediaをみると、音楽史用語の「新古典主義」は美術史用語からの転用ではないようだ。

*2:ここにも画像が掲載されているが、色調が変になっていて魅力が伝わらない。それよりも現物をみて感動した人の模写を紹介するほうが適切だと判断した次第。

*3:フランス語版ウィキペディアにもカンサックの項がない。

*4:こんな絵。調べてみると、ほかにも同題で類似した絵があるようだ。

*5:当たり前。

*6:おお、これは便利な言い回しだ。

*7:作家の公式サイトに画像があるが、この画像では細かいところがわからないので、ぜひ現物を目を凝らしてよくみていただきたい。描かれているものの正体に気づいた瞬間の衝撃はかなり大きいはず。