コメの生産量を減らしたせいで自給率が下がった、と誤読した

多くの先進国は食糧不安に備え、穀物生産力を高めてきた。それを可能にしたのは農産物の輸出政策である。たとえばドイツは小麦や乳製品で完全自給を超過する分を輸出している。

日本はその道を選ばず生産量を減らし、半世紀前に80%近くあった自給率はいま40%だ。全国各地の農業試験所では、コメの収量を増やすための品種改良はずっと御法度だった。世界の潮流とかけ離れた政策である。

この文章を読むと、日本はコメの生産量を減らしたので自給率が下がった、と書いているように読める。恣意的な引用のせいで誤解を招いているのかもしれないと疑う人は原文を通読されたい。リンク切れの場合は魚拓をどうぞ。
よく読めば「日本はその道を選ばず生産量を減らし」と書いているだけで、どのような作物の生産量を減らしたかは書いていないし、半世紀前に比べて半減した自給率がどういう自給率なのかも書いていない。さらによく読めば「生産量を減らしたので」というふうに、因果関係を表す言葉も書かれていない。
書かれていない事柄を勝手に読み込んで頭の中でストーリーを作り上げてしまうのは、読者の側に非があるのかもしれない。しかしまあ、読者に高度な読解力を求める社説だこと。

参考
農林水産省/日本の食料自給率