世にテンプレパブコメの種は尽きまじ

意見は送りたいけれど、「どう書いたらわからない」
「県の計画全文を読んでいる時間がない」という方もいらっしゃると思います。
特に今回は時間が無いので、兵庫県に本部を置く日本熊森協会にお願いし、
協会が兵庫県の会員向けに作成したパブコメの文例を送って頂きました。
内容に賛同できる方は、以下をそのままコピペして
お使い頂いて構いません。もちろん、これにご自分の意見をプラスして
お使い頂くのも自由です。ご活用ください。

以前、「2分でOK!」のテンプレパブコメの悪夢 - 一本足の蛸で紹介した例に比べると、自分の意見をプラスしてもいいと書かれているだけ良心的といえるかもしれないけれど、「どう書いたらわからない」とか「県の計画全文を読んでいる時間がない」という人にまで意見提出を勧めるのはやり過ぎだと思う。
ちなみに、兵庫県の第3期ツキノワグマ保護管理計画(案)はここから入手できるのでざっと読んでみたのだが、本文だけなら6ページ、表紙から資料まで全部ひっくるめても30ページしかないので、読むのにさほど時間はかからないと思う。
ところで、個人的に気になったのは次の箇所だ。

本県に生息する二つの地域個体群は、それぞれ隣接府県にまたがって生息しているとともに、生息域の拡大により地域個体群の境界も不明瞭になっている。このような状況において、本県だけで地域個体群ごとの管理方針を設定することは困難なため、全県の推定生息数の中央値をもとに、下記のような考え方により管理方針を設定する。

兵庫県だけで管理方針を設定するのは困難だというのなら、京都府鳥取県などと共同で管理方針を決めるのが筋というものだろう。いちおう

県内に生息するクマの個体群のうち、「東中国地域個体群」は鳥取県岡山県、「近畿北部地域個体群」は京都府と連続して分布している。各地域個体群の健全な維持を図るため、隣接府県との連携強化を進めていく。

とは書かれているものの、「連携」の中に「管理方針の共同設定」が入っていないのはなんともかんとも……。
こんなことを書くと、「特定鳥獣保護管理計画は鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第7条に基づき都道府県ごとに定めるものだから、共同でつくることはできない」などという人がいるかもしれないが、そんなことはない。条例でも関門景観条例のような例がある。法的には行政計画でも同様のやり方が可能なはずだ。実務上は難しいとは思うが、将来的な方向性として書き込むくらいは構わないのではないだろうか。
あと、細かいことだが、

農業センサスデータにおける集落単位で、被害状況のアンケート調査を行い、農業被害の発生状況とその変化をモニタリングする。

の「農業センサス」という語に

農業センサス:すべての農家を対象に調査票により、その農家の農業について調査を行う、国勢調査の農業版。

という註釈が附されているのだが、これはちょっと紛らわしい。日本では農業センサスが単独で実施されたのは1995年が最後で、その後は「農林業センサス」または「世界農林業センサス」という名称で行われている。でもって、2010年世界農林業センサスでは、

2010年世界農林業センサスは、農林業経営を把握するために個人、組織、法人などを対象にして実施する調査と、農山村の現状を把握するために全国の市町村や農業集落を対象に実施する調査に大別されます。

となっている。つまり、すべての農家を対象とする調査と、農業集落を単位とする調査とでは。同じセンサスであっても調査系統が異なっているので、本文と註釈とがずれている。
この計画案が、「くまもりNews」(日本熊森協会公式ブログ)で書かれているほど「むずかしくて分かりにくい」とは思わないのだが、この「農業センサス」などはもうちょっと紛れの少ない書き方に改めたほうがいいのではないかと思う。でもこういうことで兵庫県庁へ意見を送る気にはならない。とはいえ、修正案も出さずに言いっぱなしというのも無責任だから、試案*1を掲げておく。
まず本文。

農業集落単位で、被害状況のアンケート調査を行い、農業被害の発生状況とその変化をモニタリングする。

この「農業集落」に註釈をつける。

農業集落:市区町村の区域の一部において農業上形成されている地域社会のこと。具体的な農業集落の地域範囲は2010年世界農林業センサス農山村地域調査に拠る。

あれ、テンプレパブコメの話をするつもりが、何でこんなことに……???

*1:ここに掲載されている「利用者のために」を参照した。