700億円か800億円か? 衆議院総選挙経費の謎

近々、衆議院が解散されて総選挙が行われるらしい。
なんで解散するのか、今ひとつピンとこないので、いろいろ調べ物をしていると、解散の理由よりも今回の総選挙でかかる費用のほうに関心が移っていった。
たとえば、次の記事では、700億円が必要だと見込まれている。

自民党高村正彦副総裁が14日、安倍晋三首相が年内実施の意向を固めた衆院解散・総選挙を「念のため解散」と述べたことが、波紋を広げている。前回衆院選では約700億円の国費が投入されており、今回も同額程度が必要となる見通し。野党は「多額の費用をかけて行う衆院選大義がないことを認めた」と批判。与党からも「不用意な発言だ」との声が漏れた。

一方で、800億円だという説も出ている。

衆院議員を選ぶ「総選挙」にかかる費用は1回で約800億円といわれる。国民1人当たりの負担は約600円。そんな大金をかけて選んだセンセイ方は、サッカーW杯のどさくさに紛れるように今月22日で国会を閉じると、さっさと長い長い夏休みに入ってしまう。費用対効果を考えるといかがなものか、だ。

なお、この記事は半年くらい前のものなので、今とは多少事情が異なるかもしれない。だが、考えてみれば、上の北海道新聞の記事も2年前の総選挙の実績をもとに想定しているのだから、100億円も食い違いが出るのはおかしいのではないか。
いったい本当はいくら必要なのだろうか?
さらに調べてみると、解散総選挙? 衆院選ではどのくらい税金が使われるのかという記事が見つかった。これは良記事だ。「選挙にかかる費用」にもいろいろあって、どれを含みどれを除くかによって金額が違うのがわかる。

産経ニュースは、衆院選1回実施にかかる費用を約800億円と報じているが、2012年の衆院選では、約650億円の税金が使われている。なかでも最も費用がかかっているのが、選挙の事務にかかる費用だ。この費用は選挙執行経費基準法などに基づき国が負担することとされており、2012年12月に行われた衆議院選挙では、約588億円が使われた。

これを読んだ限りでは産経新聞の「800億円」というのはやや過大なようだ。北海道新聞の「700億円」も怪しいが、予算ベースで書いているならわからなくもない。予算はある程度多めにしておかないと、いざというときにお金が足りなくなって選挙が執行できなくなったら大変だ。700億円ほど積んでおいて精算したら600億円くらい、というのはありそうな話だ。 ……と納得しかけたところで、いちおう念のために選挙執行経費基準法なるものを参照しておこうと思った。これは略称で、正式な題名は国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律という長ったらしいものだが、この法律名で検索したところ、国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律の概要(平成25年法律第9号)【PDF】という文書が見つかった。どうやら、前回の総選挙の後に法律がかなり大きく改正されていたようだ。ただ、この資料では経費の総額がどう変わったのかまではわからない。 そこで、さらに調べたところ、国政選挙の経費を大幅削減 | ニュース | 公明党という記事が見つかった。

7月に予定される参院選では、当初の見込み額約514億円から約67億円を削減。また、次期衆院選では前回選挙(昨年12月)の予算額約641億円から約69億円が縮減され、両選挙合わせた削減額は計約136億円に上ります。

平成25年行政レビューシート(総務省)【PDF】によれば、「衆議院議員総選挙に必要な経費」の予算は約696億円なので、上の記事の「約641億円」とは違っているが、たぶん選挙執行経費基準法に基づく経費以外のものを含んだ金額なのだろう。 公明新聞を信じるなら、今回の衆議院総選挙では前回よりも予算ベースで約69億円削減されることになるが、実績ベースではどうなるのかはよくわからない。国の予算が削減されても、地方公共団体が必要とする経費が前回と同程度だとすると、予算の見積もりが厳しくなった分執行率が上昇するだけで、実際にはあまり減らないかもしれない。 というわけで、結局「よくわからない」という答えしか出なかったが、少なくとも確かなのは、産経新聞の「800億円」説はあてにならないということだ。とりあえず今のところはここまで。