ライトノベル衰退論の新展開

少年少女科学倶楽部から。

 ただちょっと気になるのは、「ロウきゅーぶ!」にしても「アクセルワールド」にしても売るためだけの仕掛けが眼につくこと。

 仕掛けというのは結局焼畑で、今は仕掛けに質が伴っていてもかならず仕掛けだけに頼った劣化コピーが生まれて読者を減らす。それに仕掛けに頼るということは読者を売る側が信用できなくなっている、ということ。

【略】

 他ならばともかく、電撃文庫でこれだとちょっとまずいかもね。今の出版も含めたコンテンツ産業というのはおそらくゆっくり衰退していくだろうし、その影響でライトノベルなんかは長くて10年、短ければ5年くらいでごく少数のレーベルだけが生き残る状況になるだろうとは思うんだけど、これはヘタすると短い方かも。

ああ、そういや今年は電撃の新人の作品、1冊も買わなかったなぁ。いちおう発売日に書店には行ったのだけど、「うみねこ」に時間をとられて読書ペースが落ちている時期だったし積んでる本がいっぱいあったので、とりあえずざっとカバー裏の紹介文だけ見て棚に返した*1。もしかしたら、無意識のうちに仕掛けが鼻についた、という要因もあったかもしれない。
ただ、一般論としては仕掛けをしない商品より仕掛けをした商品のほうがよく売れるわけで、とりわけ多くの種類の商品が製造され、消費者の選択がシビアになっている分野では、仕掛けの有無や優劣のほうが商品の品質以上に消費行動に影響を与えることは想像に難くない。さらに、ラノベをはじめとする出版物の場合、原則として一人の消費者が同じ商品を反復継続して買うことはないのだから、一発勝負の仕掛けが短期的には非常に有効だと言えるだろう。仕掛けに走るのは「まあ、しょうがないかな」という気もする。
もちろん、仕掛けだけに頼って内容ぐだぐだな商品ばかりを生産していたら、そのうち消費者が見放してしまうということもあるわけで、まずシリーズへの信頼が失われ、次に作者への信頼が失われ、さらにレーベルへの信頼が失われ、ついにはラノベ全体への信頼が失われて業界全体が衰退する、という流れはいちおう理屈の上では考えられる。もっとも、ラノベ読者の実際の消費行動がレーベルや作者への信頼に支えられている、という前提がなければ成り立たない話だけど。案外、シリーズを打ち切ったらそれで信頼失墜スパイラルは止まるのかもしれないので、狩田氏の懸念が当たっているかどうかは何とも言えない。
ただし、仕掛け云々は別としても、今のコンテンツ産業が曲がり角に来ているのは事実だから、ラノベ業界もいずれ何らかの再編が行われるだろう、とは予想できる。その前兆が仕掛け重視戦略なのかもしれない。その意味で、この記事は非常に示唆的だと思った。

*1:その時に買ったのは『狼と香辛料 X』だけ。でもって、まだ150ページくらいしか読んでいない。長すぎるよぅ。