過去は美化される

鉄砲を手放さなかった百姓たち 刀狩りから幕末まで(朝日選書)

鉄砲を手放さなかった百姓たち 刀狩りから幕末まで(朝日選書)

この本は発売直後に買って半分ほど読んだのち、今は積んであるのだが、以下の記事を読んで、ちゃんと全部読み通さないといけないなぁ、と思った。

野生鳥獣の殺生を嫌うのは、日本人の最大の美徳の一つである。明治になるまでの1200年間、日本では殺生禁止令が出っぱなしに出ていた。鳥獣にやさしい気持ちを持ち殺生しないように心掛けるのは、日本文化でもある。このおかげで、日本には近年まで生物の多様性が保たれた豊かな森が残り、豊富な湧き水をもとに農業や様々な産業を発展させてきた。せっかく国民の身にしみついている美徳を、西洋型自然観を取り入れてつぶしてしまうのは、取り返しのつかない過ちとなる。

明治維新後、新政府は旧幕時代を闇黒時代のように言い立て、「文明開化」を強調したが、さすがに百年も経つとそのようなプロパガンダの効果も薄れて、維新前の日本の実像についての研究も進み、その成果が一般にも広く知られるようになってきた。ところが、今度は逆に江戸時代は現代社会が抱えるさまざまな問題から免れていた夢のパラダイスであるかのように語る人が出てきた。
上で引用した記事は必ずしも江戸時代に限定して語っているわけではないが、ともあれ、失楽園歴史観に彩られているのは間違いない。このような考え方を批判するのは歴史研究者の仕事だろうが、専門家でなくてもある程度知識を入手して抵抗力をつけておかないといけないなぁ、と感じた次第。
さて、本の山に埋もれた『鉄砲を手放さなかった百姓たち 』を発掘するとするか。

参考
仏教の肉食禁止